戸籍変更の手術要件、違憲判決で希望が差し込む 今後の展開に期待

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トランスジェンダーの人が戸籍を望む性に変更するためには、「手術で生殖能力がなくなっていること」という条件がありました。

それが最高裁で違憲と判決が出たことで、戸籍変更の必要条件から手術の要件が撤廃される見込みになりましたね!

さまざまな批判があるようですが、ぼくはこれを希望溢れる判決だと思っています。

今後もしかしたら、

  • 高裁に差し戻しになった外観要件も撤廃されるかも?
  • 結婚して実子がいるトランスジェンダーの夫婦が、戸籍変更を希望するようになるかも? そういう動きがもし起きれば同性婚裁判への影響も出てくるはず。
  • トランスジェンダーの人が戸籍を変更することで、ホルモン療法が保険適用になるかも?(なぜか戸籍上の性別で判定されるので)
  • もしそうなれば、トランスジェンダーの人たちが各種手術を保険適用で受けられるようになるかも?

……といういろいろな展開が考えられるからです。今後の展開に期待ですね。

まずは差し戻しになった外観要件の判決を待ちたいと思います。

性犯罪を招くわけがないと思います

今回の裁判、「違憲判決が出ると性犯罪を招く」という批判がありましたね。個人的にはそんなことにはならないんじゃないかと思います。

なぜなら違憲とされたのは「性別適合手術」(卵巣や精巣を取り除き子どもができなくなる手術)だけだからです。戸籍性別変更に伴うその他の手続きは据え置きでしょう。

裁判所のサイトによると、戸籍の性別変更の条件は下記の通りです。

 家庭裁判所は,性同一性障害者であって,次の1から6までの要件のいずれにも該当する者について,性別の取扱いの変更の審判をすることができます。

  1. 二人以上の医師により,性同一性障害であることが診断されていること
  2. 18歳以上であること
  3. 現に婚姻をしていないこと
  4. 現に未成年の子がいないこと
  5. 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
  6. 他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_23/index.html

違憲とされたのは現状、5だけです。

つまりこの中でぼくが太字にした「二人以上の医師により,性同一性障害であることが診断されていること」、すなわち10ヶ月かそれ以上ジェンダークリニックに通院して精神科医2名により診断を受けるというプロセスはこのまま残るはずです。

性犯罪目的の人がそんな生活できると思いますか?

精神科医2名や家庭裁判所の裁判官の目を欺けると思いますか?

これは「心の性別が体の性別と違う」と自称するだけではダメで、医師たちが納得するぐらい自称する性別らしさが必要なのです。そしてそれは演技だけで身につけられるようなものではないと思います。

その上、戸籍上の性別を変更するということは、社会生活をその性別で行っていく覚悟が必要なわけです。(トランスジェンダーにとっては覚悟でもなんでもないんですけど)

性犯罪目的の人は性自認は限りなく肉体と近いものでしょう。数々のトランスジェンダーを診察している先生方を欺けるとは思えませんし、自認と反対の性での社会生活を望めるとも思えません。

ですから、性犯罪目的で戸籍変更する人が存在する可能性はほとんど考えなくていいと思っています。

生物学的な男性が女子更衣室や銭湯に入る可能性について

「戸籍が女性で、生殖機能を持った生物学的に男性の人が、女子更衣室や銭湯に入ってくるのではないか」という話もあるみたいですが……。

銭湯(公衆浴場)については「身体的特徴で男女を区別するように」と厚生労働省が明示しています。「公衆浴場や旅館業の施設の共同浴室における男女の取扱いについて」に記載があります。

女子更衣室に関してはそのような制限はないはずですが、MTFの方々はそもそも男性の体に嫌悪感があり、男性として機能させることを拒んでいる人たちです。性犯罪になるわけがないと思うのですよね。

とはいえ「体が男性の形をしていると信用できない」という気持ちもわからないではないですけれども……。このあたりはぼく自身当事者でないこともあり、今後の司法の判断に任せたいと思います。

外観要件に関しては個人的にも悩むところがある

一部のトランスジェンダーの方が撤廃を望んでいる外観要件ですが、ぼくは悩ましく思っています。

胸があったら男性とは言えないんじゃないかとぼく自身思うからです。だから体への嫌悪感もあるわけで。

胸は性器ではないので、元々条件に入っていない気はするのですが、それでもぼくは抵抗があります。外観要件が仮に撤廃されても、戸籍変更するかどうか大いに悩むことになるに違いないと感じています。

一方でMTFの皆さんの場合、外観要件を満たすためには違憲とされた性別適合手術が必要で、現状は非常に矛盾した状態になってしまっているんですよね。早く解決されてほしいですね……。

まとめ

  • 戸籍変更の条件のひとつである性別適合手術が違憲と判決が出た
  • 様々な物事に影響する可能性があり、今後の展開を楽しみにしている
  • 性犯罪目的でこの制度を利用できる人はいないと思う

いろいろな意見がありますが、ぼくは今後が楽しみです。

現状の判決だけでも「生殖機能を欠かなくていいなら子どもができてもいいはず」と解釈を広げていくことができるようにも思うので、新たに法律変更を求める裁判が次々起きていくかもと思うんですよね。

セクシャルマイノリティの人たちが生きやすい国になっていくといいですね。

FtM/FtX
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書いた人:
白崎矢宵(やよい)

発達障害、特に自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)と診断されています。性別不合(トランスジェンダー・FtM)でもあります。道具やサービスを使って自分の生活を改善しながら、気になった情報を雑多に発信しています。著書「アスペルガーだからこそ私は私」発売中です。

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