「若者は肉料理が好きで、歳を取るごとに魚料理のほうを好むようになっていく」という説がありますが、私には全く当てはまりません。子供の頃や20代の頃は平気で魚料理を食べていましたが、年々魚の臭いが嫌いになり、30代半ばの今となってはスパイスなしでは魚料理を食べることができません。
昔は平気だったのになあ……。
体調によっては肉の匂いも厳しいです。「支援Vol.9」に寄稿した原稿でも少し書きましたが、私にとっては食事の匂い対策が今や必須です。
発達障害者の偏食の理由候補4つ
さて、発達障害者には偏食が多いと言われていますが、食べ物の好き嫌いにどんな理由があるかを考えてみましょう。
- 味
- 匂い
- 食感
- 使う食器
大きく分けてこの辺りかと思います。
「味が好き(嫌い)」はイメージしやすいかと思います。匂いは人によるでしょうか。「食感が好き(嫌い)」もイメージしやすい人が多いのではないかと思います。わかりにくいのは食器による好き嫌いだと思いますので、少し解説を付け加えます。
食器が理由の好き嫌いとは
発達障害においては使う食器が理由で好き嫌いが起きていることがあります。
- 食器が立てる音が嫌い
- 食器の見た目が嫌い
- 食器が使いづらくて嫌い
などのことです。
私の場合は聴覚過敏があるので、食器の音が苦痛な料理があります。すくい取る性質のせいかスプーンが食器と擦れる音が不快に感じやすいのですが、プラスチック製や木製にしたら解決しました。鍋もおたまで底を擦る音が苦痛でたまらないのですが、竹のおたまにしたらかなり楽になりました。
匂いの食事への影響は大きい
本題に戻って匂いの話です。「食感も、使っている食器も平気だけど、この料理は食べづらい」というとき、味か匂いが気に合わないのだと思われます。
食べ物の匂いは、食べ物に大きな影響を及ぼしています。鼻詰まりがひどいときに食べ物が美味しくないと感じた経験がある人は多いでしょう。それは匂いがわからないからなのです。
同様の理由で、「口に入れた瞬間の匂いが無理で食べられない」という食べ物も案外とあるものです。「口に入れるとウッとなる」というものは、味のほかにも匂いが苦手なのかもしれません。
なお、味が苦手な場合も、匂いが気に入れば食べられることがあります。
今回はハーブ・スパイスの匂いで食べ物の味・匂いを対策する方法について考えましょう。
日本人は食材の匂いをあまり気にしない
日本人は食材の匂いを消すことをあまり考えません。日本料理にはあまりスパイスや薬味を使いませんね。もちろん一部の料理では使いますが、日常のメニューでスパイス類を活用して和食を作っている人は少数派ではないでしょうか。
そのため、肉や魚、独特の匂いを持つ野菜などもそのまま食べる人が多いように思います。
ところが、発達障害者の中には嗅覚が過敏な人たちがいます。そういう人たちは多くの人が平気な食材でも匂いが苦痛に感じて食べられないことがあります。そういう人たちの救いとなるのがスパイスなのです。
ハーブ・スパイスには食材の匂いを和らげる効果があります。私は苦手な匂いがする食べ物もスパイスを使えば苦でなく食べられます。苦手な食材を食べるときに、ハーブ・スパイスを使ってみませんか?
(追記)日本料理でも、料理酒を使うなどして食材の臭みを消している場合があるようです。
ここで言うスパイスの使い方
この記事では「出来合いの料理の匂いや味が苦手なときにハーブ・スパイスでどうにかする方法」を考えます。
ハーブ・スパイスには様々な使い方がありますが、調理の始めや調理中に使う方法はここでは考えません。
そのため、調理をする人はいつもどおりでOK。食べる人が「この料理イヤだな」と感じたときにハーブ・スパイスを一振りという解決方法です。料理をしない人にも取り入れやすいかと思います。
どんなハーブ・スパイスを使えばいい?
ハーブ・スパイスは食材の匂いを和らげますが、当然ながら代わりにそのスパイスの匂いがします。なので、好ましいと感じる匂いのものを使いましょう。店頭のサンプルで香りを試せる場合がありますので、スーパーのスパイスコーナーに行ってみましょう。様々なスパイスが手軽に入手できることに気づくと思います。
ハーブ・スパイスには辛味や塩味を混ぜてあるものもありますが、完成した料理の匂い対策には余分な味付けがないものがおすすめです。塩や唐辛子などが入っていないものを選びましょう。
改めてハーブ・スパイス情報を調べてみたところ、S&Bのスマートスパイスシリーズは少量で使いやすそうで良い感じでした。普通のスーパーに売っていますし、10g未満と買いやすい量です。少なすぎると感じるかもしれませんが、これでもよほど気に入らない限りは消費が大変です。
私は家にある本で見た「肉料理にはローズマリーかタイム、魚にはタイムかフェンネル」という知識を元にタイムから始めましたが、わずか7gが数年経ってもなくなりません。結構使っているのに……。
個人的なお気に入りスパイス
今までに私が自分で食卓で使ってみたハーブ・スパイスで、気に入っているものと用途を書きます。
山椒
日本のスパイス、山椒。純和風の味付けの魚料理(特に煮付け)や、刺身などに合います。焼き魚も良い感じです。特に焼きサンマには山椒が合うと感じます。
魚が臭いなーと感じたとき、最近はほとんど山椒で、たまに後述の自作ガラムマサラです。
「魚=山椒」はほぼ定番。
タイム
豚肉など肉類の匂いが気になるときはタイムをよく使っていました。豚肉にはタイムの苦みを感じるくらいかけてしまうこともあります。タイムは洋風の味付けなら魚料理にも合うときがあります。
しかし最近はもっぱら後述の自作ガラムマサラです。(そのガラムマサラにタイムを混ぜて使っていますが)
バジル(ペースト)
トマトやにんじんの匂いが苦手なのですが、生バジルを使って作ったバジルペーストは非常に合います。食べやすい! 我が家では野菜を食べるときに使うことが多いですが、肉や魚介類に使っても良いのだとか。
ペースト代わりにS&Bのバジルチューブが手軽でいいですよ!
ガラムマサラ
ガラムマサラとはインドの混合スパイスで、インドでは各家庭で独自の配分でブレンドして作っているそうです。また辛いイメージがありますが、インドでは通常唐辛子は入れず、辛くないものだそうです。
ワークショップで自分でブレンドして作ることを学んでから非常に気に入ってしまい、自作しています。スパイスの混合量は料理人さんがワークショップで教えてくださった量がベースなので、掲載は控えます。
自作では、ホールスパイスをフライパンで数分乾煎りして、ミルで挽いて粉にします。そうやって作ったガラムマサラは非常に香り高く、何にでも合います。肉でも魚でも野菜でも納豆でも、匂いが気になるものなら何でもOKの万能スパイスです!(一部例外あり)
例外的に、淡白な和風の白身魚の煮つけには合わなかった……。
そもそもが好みのスパイスをブレンドして作るものなので、自分好みのスパイスだけで作ることももちろん可能です。クミンとコリアンダーはだいたい入っていることが多いそうですが、それらが好きでない人は入れないのもアリです。凝り性の方におすすめです。
市販のガラムマサラは唐辛子が入っているのですが、辛いものが平気な方はそれでもいいかもしれません。しかし市販のガラムマサラは万能度が低いように感じます。肉料理には結構合いますが、魚にはあまり合わないと感じやすいです。自作するとそうでもないのに、不思議ですね。
ちなみにガラムマサラ、ピクルスも作れます。最近はピクルス作りにも使っています。
追記:作るのが大変になったのと唐辛子抜きのガラムマサラを発見したので、現在はこちらを使っています。市内のお店で売っていたので……。
まとめ
- 食べ物の好き嫌いの理由は、単純に「味」だけではない
- 味・匂いが嫌いな食べ物も、スパイスで香りを変えると食べられるかも!
- 料理人任せではなく、食べる人が自力でできる対策もある!
私は普段、料理は家族に任せっきりですが、料理の匂いがツライなーと感じたときは自力でスパイスで対策しています。料理が臭いと食ってかかるより遥かに食卓が平和です。
家族が真似し始めるのも見てて面白い。
冒頭でも少しご紹介した「支援Vol.9」へは、食べ物の匂い問題を含めた「においの苦と楽」という原稿を寄稿いたしました。我ながら結構面白く書けたと思っています。