性別適合手術を保険適用で受けたい。
保険適用の手術っていうと安そうなイメージがありますね。性別適合手術の費用は、内容によりますが70万~数百万となり非常に高額で、その上、全額自己負担となるケースが大半です。
保険適用となると3割負担になりますので、かなり負担が減りますが、そのほかにもさらに軽減・給付の可能性があることはご存じでしょうか。
個人的に調べた、手術の金銭的負担が軽くなる制度を書いておきます。これらの対象になるのならば、金銭的な負担は著しく軽くなります。ただし前提条件として保険適用の医療行為であることが必要で、美容整形の手術は対象になりません。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、年収額に応じて1ヶ月に払う医療費に上限額を作る制度です。詳しい情報は高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)[PDF形式:669KB]をご覧ください。
高額療養費制度がもし使えれば、年収約370万円までなら1ヶ月の負担額の上限が57,600円になります。70〜90万円の3割負担が単純に57,600円になるわけではないですが(制度の対象になるものとならないものがあるため)、無視できない制度です。
この高額療養費制度は、保険適用となる医療費が対象です。なので医療費だとしても全額自己負担の手術ではこの制度は使えません。
このことを思うと、余計に「治療の実態と合わないせいで保険適用にならない」というGID治療に不合理を感じてしまいます。
生命保険などの医療手当て(手術給付金など)の対象になる可能性がある
生命保険などの手術給付金については、加入の有無や給付金額、対象となる手術は人それぞれなので、自分で自分の加入保険について調べるのが一番いいです。確かなのは「美容整形は対象でない」ということです(GID治療の場合)。
また生命保険全般についてのサイト「生命保険文化センター」によると、
例えば、保険による保障が始まる前(責任開始期前)に発生していた病気やケガを原因として責任開始後に行った手術は、原則として給付の対象外です。
Q.手術したのに手術給付金が受け取れないのはなぜ?
とのことです。
性同一性障害の発生時期がいつになるのか存じませんが、出生時となる場合には明らかに対象でないですね。生まれる前には保険をかけられないので。
現状の性別適合手術は、そもそも保険適用になるケースが少ない
性別適合手術は保険適用でできるようになりましたが、適用には条件があります。その条件が性同一性障害の治療の実態に則しておらず、多くの場合は保険適用での治療が受けられないのが現在の状況です。
大半の患者は手術前に保険外の自由診療であるホルモン療法を受ける必要があるが、保険診療と自由診療を併用すると混合診療と扱われ保険適用外となり、全額を自己負担しなければならない。
保険適用1年で4件だけ 性別適合手術、学会まとめ
ホルモン療法は治療過程として必須のものなのですが、それをしてしまうと手術が保険の適用にならなくなってしまうのです。
ホルモン療法の保険適用を目指す署名活動
Change.orgでホルモン療法を保険適用とするための署名活動があります。
ホルモン療法が保険適用となれば、性別適合手術も保険適用で受けられるようになり、やっと治療の実態に則したものになると思われます。
現状のままでは無意味な制度です。一人でも多くの声を集め、完全なる保険適用を目指しましょう!
余談
ここまで「保険適用で手術を受けたいから」と書いてきて、こんな余談はどうかと思うのですが、診察から数日経った今では、性自認がはっきり男性になったのと同時に、
これ(GID)は病気ではない。
と感じるようになりました。
体が間違って生まれてきただけで、『病気』ではない。だから『治療』でもない。
という感覚を今は抱いています。この感覚がどのくらい続くものなのかわかりませんが、この感覚でいくと「保険適用で手術を受ける」というのはとんでもなくおかしなことになります。
経済的な負担は軽くなるけどね……。
それとICD-10では「性転換症」と呼ぶそうですが、個人的にはそちらのほうがしっくりきます。「生まれる前に性転換した」という感覚だからです。
診察前後の性自認の変化(女性ではないが男性かどうかわからない→女性ではなく男性である)については、今まで対処のしようがなかったから無意識に深く考えないようにしていたことが、はっきりと考えられるようになったということかなと考えています。
今の性自認がどのくらい続くのかはわかりません。なるようになっていい感じのところに落ち着くだろうと思います。何年かかかったとしても。