発達障害者にはゲーム好きが多い? その理由を考えてみた

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自閉スペクトラム症
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主治医がちらっと言っていましたが、「アスペルガーの人はゲーム好きが多い」とのことです。

白崎
白崎

私も好きだわ。

統計をとったわけではないので、本当に多いのかはわかりませんが、発達障害者……というより自閉スペクトラム症者がゲームに惹かれる理由は以前考えたことがあります。

  1. タスクがシンプルで明確
  2. ゲームの世界の可能性は狭い
  3. 自分なりの目標を立てやすい
  4. 達成感を得やすい
  5. 結果が出るのが早い
  6. 内容の見通しが立ちやすい
  7. 同じ話題で話せる人と出会いやすい

納得のいく理由が想像以上にたくさん思いつきました。自閉スペクトラム症者がゲーム好きなのは世の理だと思いました。詳しく見ていきましょう。

タスクがシンプルで明確

現実世界においては、

  • 何がタスクなのかわかりづらい(すべきことが明確でない)
  • タスクが複雑

という問題がたびたび起きます。まず何がタスクなのかを明確化するところから始まることが多いですね。

それに対してゲームの世界のタスクは極めてシンプルですし、だいたいの場合はわかりやすく可視化されています。たとえば、現在の課題をクリアして次に進むために達成する条件が明確です。(ストーリーを次の段階に進める、今のステージをクリアして次に進む、など)

  • 特定の敵を倒す
  • 指定されたアイテムを集める
  • 規定の点数に到達する
  • 規定の行動を達成する

など。ゲームの内容は多岐にわたるので、他にもいろいろあるでしょうね。

現実ではまず課題を正確に把握するところから始まります。それだけ現実は不明瞭なのです。

ヒント機能などで先に進みやすくなっているゲームもあります。なにで行き詰まって先に進めないのかわからない人生とは違うのです。

ゲームの世界の可能性は狭い

現実では打てる策が幅広いため、「選択肢が多すぎて何ができるのかわからない」という混乱が発生しやすいです。

それに対し、ゲームの世界でできることは限られています。どんなに自由度を売りにしているゲームでも、現実世界と比べると自由度は圧倒的に低いです。そのおかげで策が選びやすくなっています。選択肢が狭いからこそ考えやすく、楽しみやすいのですね。

自閉スペクトラム症の人たちには「自由時間の過ごし方がわからない」と苦悩する人が多いです。私もその一人です。ある程度の制限があることで、逆に快適に過ごせるのです。

自分なりの目標を立てやすい

可能性の狭さとも繋がってきますが、ゲームの世界で自分なりの目標を持つことは比較的簡単です。何も思いつかない人は「トロフィー」「実績」「称号」のような開発者から提示された目標を達成して遊ぶこともできます。

もちろん自分なりの目標設定で遊んでいる人もいます。何かと明瞭なので、目標も定めやすいのがゲームの世界です。

現実世界では可能性が広すぎるため、目標を定めにくいのです。現実世界はタスクも課題も明確でないので、目標を作るためにもスキルが必要です。

達成感を得やすい

ゲームの遊び方はそれぞれのゲームごとに違います。どんな人生経験があろうとも、ゲームの世界では最初はみんな初心者です。そのため、多くのゲームでは初心者が簡単に達成できる課題から徐々に難しい課題へとステップアップしていきます。ゲームを進めるにつれてプレイヤーも成長していくことができるのです。

ゲームの世界の達成感は、大きく分けて2つあります。

  • 課題が明確なので、達成すると達成感がある
  • 初心者のころにはできなかった難しい課題を達成できるようになると、自分の成長を感じ、より達成感を得られる

この二段構えの達成感システムは、人生には明確に存在していません。こういった現象が人生において起きることもありますが、「頑張っても頑張っても成長できない」「どんなに工夫してもうまくいかない」という苦悩で途中でやめてしまうこともかなり多いのが人生です。

当然、ゲームの世界でも習得の速さは人によって違いますが、人生経験が大きく物を言ってくる人生よりは平等さが高いと言えるでしょう。

「攻略情報」というノウハウのやり取りも盛んなので、自分の見つけ出した方法が話題になることもあり、達成感には事欠かないのがゲームの世界です。

現実世界では失敗して当然のような高難易度の課題が最初から発生することがあります。それと比べると、必ず初心者向けの課題から始まるゲームは非常にユーザーフレンドリーですね。

結果が出るのが早い

現実世界では、何をやってもとにかく時間がかかります。行動を起こした結果が出るのが1年後なんてことはザラですし、1年で結果が出るのはむしろ早いほうだったりもします。

つまり自分のやったことにどんな意義があるのかわからないまま長い時間を過ごすことになります。不透明な状況に置かれることは、自閉スペクトラム症にとっては大きなストレスです。

それに対し、ゲームの世界では数分~数時間で結果が出ます。遅くても1日、1週間という感じで、人生と比べると圧倒的にハイペースです。不透明な状況に置かれる時間がそれだけ短く、ストレスが軽いのです。

内容の見通しが立ちやすい

ゲーム上の課題をクリアすると、新しく「楽しい体験」が待っています。ゲームは娯楽コンテンツだからです。これは「何かを成し遂げたところで、その先に楽しいことが待っているとは限らない」という現実の不確実さと比べると、圧倒的に見通しが立ちやすい状況です。

ストーリー仕立てのゲームでは先が読めない展開になることもありますが、「そのさらに先には納得のいく展開が待っているはず」という前提がゲームでは成り立ちます。裏目に出続けて楽しさがどこにも無いようなことが現実にはままありますが、ゲームの世界では稀です。

もっともゲームの主旨によりますので、ひたすら悲劇的な展開が続くゲームもあります。ですが、ゲームにはゲームジャンルというカテゴリ分けがあり「このゲームは鬱展開が続きますよ」「このゲームは恐怖体験が続きますよ」と展開の方向性があらかじめわかっているので、見通しが立つことに変わりはありません。

そのほか、能力が数字で可視化されていることなども見通しの立ちやすさに繋がります。現実で人の能力が数値化されていることなどありえませんが、ゲームの世界では数値化されていないほうが珍しいです。

同じ話題で話せる人と出会いやすい

現実世界で話題が共通した人と出会うことは非常に少ないですよね。道行く人に話しかけて、世間話以外に共通の話題を持っている可能性はかなり低いでしょう。

ですが「同じゲームを知っている人」ならばある程度は話題が共通しています。「この人は話が通じる相手かどうか」といちいち慎重になる必要がないのです。

オンラインゲームなど、ゲーム内で会話ができるゲームならば、最低限そのゲームの話題は共通です。人とのコミュニケーションがとりやすいのです。

「発達障害者はコミュニケーションが嫌い」と思い込んでいる人がいますが、決してそんなことはありません。自分の興味がある話題や、自分に理解を示してくれる人となら、話したいのです。

ですが、発達障害者の独特の感覚に理解を示してくれる人や、独特の感性により好きだと感じるに至ったものを同じように好きと語り合える人には、現実世界ではなかなか出会うことができません。ですが、ゲームの話をしたければ、ゲームの世界では簡単に出会えます

まとめ:現実は複雑で不確実で不明瞭。ゲームはシンプルで確実で明瞭。

現実が様々な不確かさ・不透明さに溢れているのに対し、ゲームの世界はシンプルで確実で明瞭です。はっきりと見通しが立つものが好きな自閉スペクトラム症者が好むのは当然と言えるでしょう。

自閉スペクトラム症
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書いた人:
白崎矢宵(やよい)

発達障害、特に自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)と診断されています。性別不合(トランスジェンダー・FtM)でもあります。道具やサービスを使って自分の生活を改善しながら、気になった情報を雑多に発信しています。著書「アスペルガーだからこそ私は私」発売中です。

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以前書いていたブログ「他者と私とアスペルガー症候群」の記事を抜粋し読みやすく書き改めたもので、6年近い自己分析の集大成です。
母から見た生育歴、母と私のすれ違いを解消した記録もあります。自閉スペクトラム症の子と定型発達の親のすれ違いが両方の視点から読める本です。

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