発達障害や自閉スペクトラム症の人たちは「優先順位をつけるのが下手」だと言われます。私も多分に漏れずそうです。
そして私がたびたび直面して苦労しているのが、趣味や私生活における優先順位のつけ方です。
これらは支援センターに相談しても「趣味は達成できなくても誰にも迷惑をかけませんよね」と優先順位を最低に落とされ、趣味同士の優先順位のつけ方は全くアドバイスをもらえません。
確かに、仕事と比べたら、他の人への迷惑はかけづらいのかもしれません。
ですが私の場合、趣味や私生活の課題が職業選びにも関わってくるのです。
私が趣味や私生活でやりたいこと
私が趣味や私生活、つまり仕事以外の時間に取り組みたいことは、大きく分けて以下の通りです。
- 性別違和対策のための貯金(通院のための旅費、手術費用など)
- 個人事業の支えとなる副収入を得るための手段として、ハンドメイドなどの学習
- 余暇としてゲームや読書
- 本気で取り組みたい趣味の活動
- ストレスを減らし、健康を維持して暮らすための生活改善(衣類、食事、運動など)
もう少し詳しく見ていきます。
貯金
貯金は、現時点の個人事業では収益がさほど上がらないことがわかっているため、副収入あるいは「個人事業を副業として別の職業に就く」などの工夫が必要です。
貯金をどの程度の優先順位にするかによって、今のまま個人事業を続けるかどうかさえ変わってきます。
学習
副収入のための学習については個人事業を続ける上では必須だと思っていますが、その割には全く取り組めていません。
学習費用の投資が必要になるのですが、それだけの余裕がありません。そこをどう捻出するかも、どれだけの優先順位で取り組むかで変わってくると思うのです。
余暇
完全に余暇の活動は、なさすぎると精神の健康が維持できないため、ある程度必要です。
ですが余暇活動に時間を割きすぎるとかえって精神状態が悪化するため、適切な量を保つ必要があります。
優先順位は「高すぎず低すぎず」という一番難しいところになります。
本気で取り組みたい趣味
本気で取り組みたい趣味とは、全力投球はしたいものの、「それで稼げたら稼ぎたい」という発想はなく、あくまでも趣味として取り組みたいことです。
これは労力がかかるため、心身ともに余裕がないとできません。そのため、まず健康維持からになります。
生活改善
私は発達障害や性別違和で日常生活で受けるストレスが強いため、それを軽減して健康を維持する工夫は最優先だと思っています。
ですが「最優先」とはいえ、そればかりになって他に何もしないわけにもいきません。あくまでも「仕事や趣味を続けるため、つまり人生を生きるために必要」なのであって、生活改善は人生の目的ではありません。
どうやって趣味や私生活の優先順位を決めるのか
ここまで見てきたように、仕事以外の優先順位は大雑把にはあります。
ですが、優先順位次第で職業選びにも関わるようなものは「人生における物事の優先順位」として非常に重要です。
仕事もまた人生を生きるための手段にすぎないのですから、「仕事が最優先、その他は適当に」では私が望む人生が送れるとは思えません。
そのため、優先順位を決める足掛かりを考えました。
仕事の優先順位はどうやって決めるか
その前に、優先順位のつけ方としてノウハウの多い「仕事における優先順位のつけ方」ですが、私の場合は「達成までにかかる時間」と「期限までの時間」から考えるのが割と楽です。
達成までかかる時間 | 期限までの時間 | 優先度 |
---|---|---|
長い | 短い | 最優先 |
短い | 短い | 優先度2位 |
長い | 長い | 優先度3位 |
短い | 長い | 優先度4位 |
「達成までかかる時間」は「タスクの難易度」と言い換えることもできます。「難しくて手こずって時間がかかりそう、そして期限は目前」というときは何よりもまずそれをやらなければ達成できないので最優先、ということです。
これに加えて、他の人にかける迷惑の度合い、例えば
- 人に頼まれたタスクかどうか
- お客様のためか、それとも内輪のためか
などを考慮するのも手です。
また、段階的なタスクかどうか、つまり
- そのタスクは、他のタスクの前提条件か?
- そのタスクは、他のタスクをやってからでないと手をつけられないか?(他のタスクが前提条件になっているタスクか?)
も優先順位を決める手がかりになります。
これらの考え方は、仕事における優先順位のつけ方では非常に役立つのですが、趣味の活動や私生活の問題になるとほとんど効力がありません。
趣味や私生活の優先順位のつけ方案
優先順位は結局、取捨選択をしてつけていくものなのですが、趣味や私生活において取捨選択の基準となる情報がはっきりしていません。なので、ここでは
- 生きがい
- 予算
- ストレス
を元に優先順位のつけ方を考えてみます。
生きがいから選ぶ
「それを達成できたらさぞかし楽しいだろう、幸せだろう、満足するだろう、生きがいを感じるだろう」というタスクを優先していく考え方です。これは私向きではありません。
なぜなら、私の人生の理想は「学びたいことを学び、取り組みたいことに取り組み、やりたいことを全部やり終えて人生を終える」だからです。
現在の私は生きがいから選ぼうとしている状態ですが、「あれもこれも全部やりたい」になってしまい、全く優先順位がつけられません。
予算から考える
かかる費用から考えるとある程度シンプルになる気がします。
まず、収入を得るための「仕事」は最優先になりますね。
その次に副収入ですが、これは投資額の少ないものか、費用対効果の高いものを選択していくことになるでしょう。
私の場合、副収入は学習から始まるので、
- 投資額の少ないもの:独学、学習費用や素材などが安く済むもの
- 費用対効果の高いもの:信頼できる講師に習うなど
となりそうです。
またこの場合、貯金は「余力があったら」という感じで優先順位が下がってしまいます。
ストレスを減らすための活動から考える
この場合も「なんのためにストレスを減らすのか」と考えると、「仕事を続け生活費を安定して獲得する」は最優先の目標となるように思います。
また私は自分の体への嫌悪感が強いため、手術で不快な部位を切除するなどもストレスを減らすためには必要になり、貯金の優先順位が上がります。
そうすると副収入のための学習はほとんど予算が割けなくなるので、低予算でできるもの、今家にあるものを使ってできるものになります。趣味に至っては割く予算がありません。
この暮らしを想像すると、「忍耐、忍耐」の暮らしになりそうな気がして気が滅入ります。ストレスを減らそうとして、かえってストレスフルになるというよくわからない結論です。
貯金を最優先として職業を変える場合、会社勤めをしてまたうつ病になるリスクを背負う点も考慮しなければなりません。
妥協案:今の生活でできる範囲のことをする
結局これに行き着くわけですが……。
- 仕事:個人事業を細々と続け、軌道に乗るまで何年も耐える
- 貯金:できる範囲で少しずつ貯めていく
- 学習:投資額の少ないものにし、学ぶ内容も制限する
- 趣味:生活に余裕が出るまで保留する
- 生活改善:できるだけ低予算で、直面し次第解決していく
- 余暇:健康を維持できる程度に楽しむ
こうするしかないのか……。
「生活の状況はそう簡単に大きく変化しない」という前提に立つと、これしかない気がします。大きく変化させると著しく体調悪化するので、そういう意味でも大きな変化はさせられません。
「本気で取り組みたい趣味はしばらく保留」と考えるのは、せっかく取り組めそうになってきたのに非常に残念ですが、その楽しみを学習の中に求めたいと思います。
まとめ
- 趣味や私生活の優先順位のつけ方もサポートしてほしい
- 予算、体調、生きがい、人生の目標などから、自分が一番優先したいものをどうにか見つけよう
- 現在の生活を維持することを前提にし、予算と自分の体力のやりくりをして優先順位をつけよう
- 取捨選択は私生活でこそしなければならない
- 結局どうあがいても「仕事」は最優先になる
発達障害者支援は片手落ちだと感じます。「人生を生きる」という観点での支援ではなく「仕事で人に迷惑をかけないための支援」が中心になっています。
発達障害者が人生を自分らしく楽しんで生きるためには、仕事以外の活動においてこそ充実した支援が求められるように思うのですが、その辺は「適当にやれ」と投げ出されます。少なくとも私が受けている支援はそうです。
プライベートに口出しができないという制限があるからなのかもしれませんが……。人生を生きるスキルは何十年経っても身につく気がしません。
余暇、趣味、私生活を楽しんで「人生を生きる」ための支援がもっと拡充しますように……。