子どものころから着物に憧れていて、20歳の成人式は絶対振袖を着たいと思っていました。成人式の日を美しい青い振袖で迎え、とても幸せでした。
その頃からずっと「普段から着物を着る暮らし」に憧れ続けていましたが、なかなか実行には移せませんでした。
そして16年半が経過した今、やっと着物を着始めました。男物の着方で。
男物の着方の良さ
着物を男物の着付け方で着ると何が良いかというと、
- 着るのが簡単
- 着ていて楽、着心地がいい
- シルエットがおっさん(重要)
女物の着付けは、「一人であんなのできるのか!?」と思うほど複雑で大変です。特に帯はどうやるというんでしょう……。
その上、成人式のときに振袖を着たときは「綺麗だけど苦しい」と思っていました。固定する部位が多いため、あちこち締めるのでかなり苦しいです。背骨が曲げられなくなるので、姿勢は正しくなりそうですが。
それに対して男物は、丈がちょうどよくできているので「おはしょり」が不要ですし、帯も幅が太すぎなくて扱いやすいです。非常に簡単に着られます。
その上、帯の位置が腰骨なので、締めても苦しくありません。苦しくないどころか、洋服よりよっぽど楽です。
そして20歳のころは曖昧だった性自認がやっとはっきりした今、非常に重要なのは、シルエットがおっさんになる点です。
私の骨格はいわゆるボン・キュッ・ボン体型で、同じ骨格の人はマリリン・モンローと言われました。あそこまでスタイルはよくないのですが、洋服を着ると女性らしいシルエットになりがちです。
それが嫌で工夫を考えたりもしていたのですが、なかなか難しいんですね。最近はメンズのストレートなラインを活かした仕立ての衣類に手を出そうか考えていたところでした。
が。着物を男物の着方で着ると、極めて自然にシルエットが男性になります。着物着て鏡に写ると、そこにはおっさんがいます。小太りなので腹が出ていて、それが角帯で強調されるので、よけいにおっさん。このしっくり感がたまらないんですね。こんな具合です。
やっぱおれ男だったんじゃん……。
母には「昭和のおじさん」「家におじさんが増えた」と言われています。面白いぐらい自然に馴染む言葉です。レディースファッションを着て、服は気に入っているのに「女らしくなって」と言われて不快だったのと正反対です。
体も心も洋服を着るより楽なので、もう着物を着て暮らせば私は幸せでいられるんじゃないかと思いました。
寝るときも寝巻にしてみた
着物があまりに楽なので、寝るときも家に数枚あったガーゼ寝巻にしてみましたが、それがまた快適です。寝ている間に脱げますけど。はだけすぎて半脱ぎ状態。あれだけ脱げるくらい動いているということは、洋服じゃかなり苦しいんでしょうね……。
あと洋服で寝転がっていると腹が出てきて、それが不快で腹巻がほしかったんですが、寝巻だとそれはなくなりました。腹周りは帯でガードされててずっと覆われています。寝巻強い。
まあ脱げてくるのが結構落ち着かないので、カスタム案をいくつか考えました。
- ワンピース型の寝巻を買う
- 前を縫ってしまう(ワンピース型にリメイク)
- 胸元と膝上あたりに紐を増設する
紐増設はいいかもしれないのでやってみよう、となった末にいい感じのカスタムができました。後々別の記事にします。
女着物が大量問題
ところで、私は洋服は割と女装趣味ですが、着物で魅力を感じるのは男物です。
が、我が家にある着物はほとんどが女物です。曾祖母が着物を縫う人だったので、手縫いで作った着物や浴衣を母が数枚持っていたのに加え、
この着物買ったとき30万したんだけど、全然着てない。
という訪問着(たぶん)・長襦袢・帯のセットまで出てきました。虫干しもしてないのに無事でした……。奇跡。
実家に帰ればおばあちゃんの60万の大島があるはず。
いったいどれほど華やかなやつなんだ……?
着たいのは男物なのに、大量に提供される女物。
あんたがおばあちゃんの着物大事にしてくれて嬉しい。
そう言われたら着なきゃいけないじゃん……。
あ、男物もありました。父の着物なんですが、羽織と長着と長襦袢のセットです。濃紺の使いやすそうな羽織だったので、今後愛用したいと思います。長着もぜひ着たい。
女着物を男着物として着るための参考資料
女物見つかってもどうするのよ、と思っていましたが、着物男子は案外女物を着ているらしいです。
そうか! アリなのか! じゃあ着るか!
……とはいかないのが丈の問題。私は身長160cm弱なのに対し、上のほうで出てくる男子たちはだいたい170cm台。女物の着物の着丈がちょうどいい人たちなのです。
私は女物は「おはしょり」しないと着られないぞ……!!!
おはしょりは、女物の帯は太いので止められるのですが、男物の帯は細い上に締める位置も違うので、おはしょりした上で男物として着ようと思ったらかなり試行錯誤が必要そうです。
腰の部分で揚げて(縫って)しまうという手もあるのですが、そうすると女物として着たい場面で着られなくなります。下ろせば着られますけど、また揚げ直す手間がありますし、第一、着物も傷みそう……。普段着ならまだしも、礼装でそれはやりづらいです。
この辺は今後研究したいと思います。ひとまず母の30万の着物で試すのは気後れするので、古着の1000円台の女物(身長と同じくらいの丈)を買ってきて練習してみたいと思います……。
現時点での着付けの案
現時点で「これならできそう」と思っている案は、腰紐代わりにゴム製の着付け小物を使うというものです。
- 襟はコーリンベルトや着物ベルトでしっかり止める
- ゴムの着付け小物を活用
男物を普通に着る場合と違ってかなり固定力が必要になるので、上記のような感じで工夫したら着られないかな。
使えそうだと思っている着付け小物はこちら。
女物である以上コーリンベルトでも止まりそうではありますが、止める位置が変わるので上手くいかないかも。
着こなしの案
着られたとして、母の着物は華やかなピンク色なので、それをどうカバーするのかという問題はありますが……!!
女物を積極的に着ているマサキモノさんのこういうお姿見てると、「ピンクでも羽織合わせたら案外なんとかなるんじゃ?」と思えます。
うまいこと着こなせるようになったら写真載せたい。
まあ根本的に訪問着(準礼装)なので、普段着として街を歩くには華やかすぎるんですけどね。講師する日とかならありですかね? 派手すぎるか……?
小袖という着方
感覚過敏コミュニティ「かびんの森」で「小袖」という着物を教えてもらいました。
女性の着物の着方が現代のようになったのは江戸時代の中期頃のようで、それ以前は女性も男性と同じ着方だったようです。それを現代で改めてピックアップしているようです。
こういうのを見ていると、女物の着物もおはしょりしないで男物みたいに着てもいいんだなと思えますね。「小袖だから」で済んじゃう。いいじゃないですか、これ。変な工夫しないで、腰、揚げちゃおうかなあ……。
でも普段着はともかく、礼装のような質のいい着物に自力で針を刺すのは怖いです。
トイレどうするの問題
着物初心者がみんなぶつかるであろうトイレ問題。結構解説しているサイトはあるんですが、自分の場合はどうしているかというと……。
- 裾をまくり上げるとき、帯と腰紐を軽く持ち上げて腰骨から少し上にずらす
- 帯の下から抜き取るように下着を下ろし、用を足したら軽く戻す
- 無理に元通りにしようと押し込まない
- 裾を下ろしたら、腰紐と帯を両手でしっかり下ろして元の位置へ
こんな感じで割となんとかなっています。写真つき解説は他サイトへ。
女性の場合はタイトなロングスカートと思えばあまり変わりません。帯という差はありますが。
着物でのトイレはローライズの下着だと少し楽になるみたいですが、ローライズにも限界があって、腰骨に全くかからない下着というのは難しいです。なので何かいい方法ないかなー、と探したところ、こんな下着がありました。
「股割れショーツ」または「股割れズロース」などと言うらしいです。レディースとありますが男女共用らしい……? 介護用品として売っている場合もあります。検索するときは「和装」とつけないとセクシー下着が大量ヒットするので注意。
男性の場合の着心地は不明ですが、着物男子界隈で話題にならないので、あまり男性向きではないのかなーと思いますね。着物男子だとふんどし着用の人がたまにいますね。
あとは私が洋服着るときに愛用しているサスペンダータイプのレギンスが、着物用の下着としてめちゃ便利です。家の中で浴衣着てるんですが、足元ひんやりするので。寝るときとか超寒い。でもこれがあると安心。
大きいサイズ以外売り切れちゃってますが……。
トイレが楽なんですよね。この上に股割れショーツだと足元覆ったまま用が足せて便利そうです。股割れショーツの七分丈でもいいと思いますけどね。
股割れショーツじゃなくても慣れれば結構平気だけど、ローライズにはしたい気がする……。
男着物を着る・楽しむために参考にしているサイト
身近に着物を着る人がいないので、情報はネット頼りです。男着物をこれから始めたい方々のために、参考にしているサイトにリンクしておきます。
着方について
- きもの-わ-ふく:帯の締め方が左右どっち巻きも書いてあったり、洋服との組み合わせ方のヒントがあったりと現代人が着物を楽しむのに役立つ情報が多いです。参考になります。
- 男のきもの大全:下着まで着物にしたいような本格派なら非常に参考になります。私は帯の締め方はこちらで覚えました。
- 男着物の加藤商店 和装コンテンツ:着物屋さんならではの大変わかりやすい解説が豊富です。このお店の和装小物は使いやすそうなものが揃っています。
また自分の体に合った着物のサイズは以下のページでかなりしっかり割り出せます。和裁のページなので仕立てるときに必要なサイズが出てきます。男女とも対応。
着物を買うとき知っていると便利なのは
- 身丈(着丈)
- 裄(背中心からの袖の長さ)
- 前巾
- 後巾
なので、自分のサイズを調べてメモしておくと買いやすいですよ!
古着の購入場所
着物の醍醐味、それは古着探し。流行りすたりがほとんどないので、昔のものでも着られるのが着物の良いところです。
実店舗なら、有名店以外では全国各地にあるオフハウスに結構取り扱いがあるそうです。私の地元でも売っています。男物は少ないですが……。他のリサイクル店にもあるかもしれませんね。
私が着物を探してみて探しやすかった通販サイトを2店ご紹介します。このほかにも古着の着物を扱っているお店は多数ありますが、男物を多く扱っているお店は少ないです。
リサイクルきもの福服
「日本一敷居の低い着物屋」を自称するだけあって、初心者でも自分に合う着物が探しやすい仕組みになっています。サイズ表記がていねいです! びっくりするほど安いクーポンもときどきあります。
アンティークきものシンエイ
こちらもかなり見やすいお店です。正絹が多め。着用向きの安い商品がかなり多いです。ときどきお得なクーポンもあります。
防寒や小物作り、古着リメイクを考えるのも楽しい
着物の防寒案
北海道の冬に外で着物を着たいと思うと、防寒対策がかなり必要そうな気がするので、その辺も工夫が必要そうで楽しいです。
「着物は結構暖かい」と言っている人もいますが、試したことがないので何とも言えません。本州の防寒とは根本的にかなり違いますし……。
このtogetterはいろんな着物男子の防寒対策が見られるのでちょっと面白かったです。
また父の着物は着丈がかなり短いのですが、「雪駄で雪の上を歩くときはくるぶしが見えるくらいでないと着物を汚す」とその丈に仕立てたそうです。冬は着丈短めに着付けてブーツ着用がいいかもしれません。
羽織紐をアクセサリーにする案
あとは羽織に羽織紐をつけると格調高すぎて着づらいので、カジュアルなアクセサリーをつけたいなと思っています。
死蔵しているブレスレットなどをリメイクしたら楽しめそうです。0から作るのは大変だけど、リメイクなら……。
古着の修繕
曾祖母が母に縫った綺麗な浴衣が2枚あります。
こちらは写真には写っていませんが、背面に広範囲に泥はね汚れがあり、洗っても完全には落ちませんでした。またところどころ血のシミや、その他落ちきらないシミなどがあり、外に着ていくのは難しい状態。
なので藍染めをしてみたいと思っています。ずっと使ってみたかったKONYA-Iを今こそ買うときが来た……予算の都合でもうしばらく先になりそうですが……。
こちらの着物もところどころ大きなシミができており、完全には消えませんでした。また写真にも写っていますが、柄がところどころにじんでいます。洗濯のせいではないと信じたい。
こちらも藍染めで全体的に薄く色をつけたら、柄が残りつつ柄のムラも気にならず、シミもより目立たなくなるのでは……と思っています。上手くいくかなあ……。
追記:染めてみました!
着物暮らしのデメリット
着物生活は想像以上に楽で快適なんですが、もちろんデメリットもあります。
- 着物のまま運動は無理
- 洋服の苦しさが増し、洋服のほうが良いシチュエーションが苦痛
私は発達障害のためか感覚過敏が結構あり、対策して楽なほうを知ると元に戻れなくなるのです。聴覚過敏しかり、視覚過敏しかり……。
今回はなんと、衣類に対しても過敏性があったことが発覚してしまいました。
洋服、苦しい……。
常時和服で済めばいいのですが……。今後、外に着られる着物を手に入れたとしても、運動したいときはどうしても洋服になります。
今は首がまだ直りきっておらず、運動できません。ですがまた運動できるようになったら、「いちいち着替える」という工程がプラスされます。面倒そう。そのうえ着ると苦しいという……。
まあ、運動が再開できたらまた考えます。
まとめ
- 着物は心身ともに楽
- 男物の着付け方はとても簡単
- 女物を男物として着るには身長次第で工夫が必要
- 古着探しが楽しい
まだ外にはあまり着て出ていませんが、1回着て外出してみたところ、特別なリアクションをされることは無かったので、普通に着ていいものなのかもと思いました。
それにしても私が着物「男子」と名乗れる日はいつか来るんでしょうかね。現時点では男装着物女子にしかなれない……気持ちの上では男子なんですけど……。