誰でも親から一生に一度は聞いたことがあるであろうセリフ、「あなたのために言っている」。言葉にできない腹立たしさや苦痛を感じる方も少なくないと思いますが、なぜそういうイヤな気持ちになるかわかりますか?
「あなたのため」は「自分のため」
あなたは学校に行ってきちんと学ぶべきよ。
これはあなたのために言っているのよ。
お前は会社に入って社会経験を積むべきだ。
それが将来のお前のためになるんだ。
主に親からの説教でこんなことを言われるのではないかと思いますが、これらは言っている親自身のための言葉です。
「子どもが学校に行かない。学校に行かない子の将来がどうなるか不安。学校に行ってほしい」……そういう気持ちから「学校へ行くべき」という言葉が出てきます。
「いい大人が仕事もしないなんて……。会社勤めを経験しないと問題があるのではないだろうか。いい年の子どもが無職なんて人に言いづらい」……そういう親のエゴが「働け」という言葉をぶつけます。
子どものためではなく、親が自分の不安をどうにかしたくてこういう言葉を発するのです。
善意を装った価値観の押しつけ
「こうしたほうがあなたのためになる」という言葉は、価値観の押しつけでもあります。暗に相手の現状を否定し、「私の言う通りにしたほうが良いに決まっている」という価値観を頭ごなしに押しつけている発言です。
否定されていい気分になる人はいません。「今やっていることより、他のことをやったほうが“人生のためになる”」……余計なお世話ですよね。
善意を装った言い方は悪質です。聞き手の罪悪感を煽り、従うほうが正しいのではないかという気分にさせるからです。
「自分は正しい」という気持ちは人を残酷にする
司馬遼太郎の名言に、以下のようなものがあります。
「人間は 自分は絶対に正しいと思い込んだ時に 最も残酷な事をする」
出典
司馬遼太郎
戦争で敵国に残虐行為が行われるのも「相手は悪で、自国が正しいから」。テロ組織が恐ろしいテロ行為をするのも、「国家が間違っていて、自分たちが正義だから」。
親が説教をするときも同じことです。「子どもは間違っている。私は正しい」という心理が働くからこそ、子に残酷なことを言ってしまうのです。しかも、善意を装った形で。
多様性を認めよう
子は親と違う文化で生まれ育っています。なぜなら、親と違う時代に生まれ、違う親に育てられているからです。育ての親や生まれた時代が違えば、身につける文化も当然変わります。
ゆえに血のつながった子が親と異なる文化を持つのは自然なことなのですが、なぜか多くの親にとってそれは受け入れがたい事実のようです。
子には子の、親には親の人生があります。それぞれがそれぞれの生きやすい生き方で生きればいいだけのことだと思います。
もし「あなたのために言っている」を言われたら?
もしこの先の人生で「あなたのために言っている」と不快なことを言われたら、そのときは、「相手はこういうことが正しいと思っているんだな」「相手は不安だからこうしてほしいと思っているんだな」と受け取り方を変えてみましょう。
「説教をされた」「望んでもいないことを押しつけられた」とだけ思っているよりも、いくらか割り切りやすいと思います。
物事の大部分は自分の受け取り方次第です。相手がワンクッションを入れてくれなかったら、自分で入れてみましょう!
まとめ
いつも長文なので、3行でまとめました。
- 「あなたのため」は「自分のため」
- 善意を装って価値観を押しつけるのはやめよう
- 受け取り方の工夫で不快感を和らげよう
お役に立てば幸いです!