トランスジェンダーの話題になるたび、一定数目にする意見があります。それが「『心の性』なんて存在しない!」というもの。
「心の性」なんかない。
トランスジェンダーは嘘つきだ。
「心の性」ってどんな感覚なのかわからない。
あるとき、前々から交流のある知人がそういう意見なのを知って、なぜそのように思うのかを尋ねてみたことがあります。そうしたところ、このような意見が返ってきました。
自分が男だとか女だとか意識の上で考えることは無くて、「体が男だから男」と思ってるんだよね。
つまり彼は体の性に違和感がなく、体の性をそのまま心の性として受け入れることができるのです。
羨ましいなあ……。
トランスジェンダーのぼくが思う体の性と心の性
ぼくの体は女性なのですが、ぼくの場合はこんな感じです。
意識の上で自分が男だとはっきり思うことはないけど、体が女なのには違和感があるし、自分が女だと思ったことがないし、女性を同性だと思ったこともない。
小学生の頃からずっと「自分は女性ではない」と思って生きてきましたが、自分が男性なのかどうか、はっきり断言できるようになったのは35歳の頃からです。
今は自分が男だと思える根拠(自分が男だと自分で認められる根拠)がいろいろと揃ったので「ぼくの性自認は男です」と申告できるようになりました。
体の性に違和感が無い人たちの自分の性の感覚
ぼくは広くカミングアウトしているので、ときどきリアルで会った人たちに性自認に関わる話題を振ることがあります。
たとえばトイレについて。トランスジェンダーにとっては、体の性と心の性が違うためどっちに行くべきか悩ましい問題ですが、体の性に違和感のない人たちはどう思って選んでいるのでしょうか。
「トイレ選びに違和感や悩みがない」ってどんな感じなの?
そっちに行くのが当たり前と思って、疑問を感じたことがなかった。
体が女だから、女性用のほうが便利だから女子トイレ……かなあ。
体の性に違和感がない人たちは「体に合うほうに行くのが当たり前」と思っているし、体に合うトイレのほうが便利だから困ることもないという感覚らしいです。
性自認を男性とはっきり認識するようになってから女子トイレに違和感があり、行くたびに困っているので、とても羨ましい話です。
カミングアウトしなければ女性に見えるのは間違いないから、女子トイレに行くしかないんだけどなあ……。
かといって男子トイレなら違和感なく行けるかというと、全然そんなことはないのですが……。社会生活上男性だったことはありませんし、体が女である以上は女子トイレのほうが使いやすいので。
体の性に違和感がない人が羨ましい
体の性に疑問や違和感のない方々のことは、たびたび羨ましくなります。
ぼくも違和感のない体で生まれたかったです。
自分の体が自分の思う性のものだったら、どんなにか幸せだろう……。
最近、カミングアウトする機会が増えてから、「白崎さんを女性だと感じたことがなかった」と言ってくださる方がいてとても嬉しいです。体の性に引っ張られて認識してしまう方のほうが世の中には多いのではないかと思うのですが、中には心の性を主体に認識する方もいらっしゃるんですよね。
ホルモン療法を始めて声変わりを迎えることができたら、もう少し男性と認識してもらえる機会も増えるでしょうか。楽しみです。
まとめ
- 「心の性などない」と思っている人たちは、自分の体の性に違和感がない
- トランスジェンダーは自分の体の性に違和感がある
- ぼく(トランスジェンダー)は体の性に違和感がない人たちが羨ましい
本当、羨ましいんですよね……体の性に違和感がない人たち……。
いいなぁ……。