「誰かに性自認を名乗る権利を与えてほしかった」という気づき

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私は小学生のころから自分の肉体の性(女性)に違和感がありました。

どこに相談したらいいかわからず、誰にも相談できないまま、本やテレビで性同一性障害のことを調べていました。(当時、インターネットは現代ほど普及していませんでした)

テンプレ的な性同一性障害情報ばかりだった小学校~高校時代

その頃の性同一性障害の情報は、性自認がはっきりした人のものが中心でした(1990年代~2000年代初頭)。なので、

  • 肉体の性のトイレに違和感があって行きづらい
  • 学校の制服がイヤで着たくない
  • 肉体の性らしい服装がイヤで、肉体の異性の服装をしたい
  • 書類の性別欄で、肉体の性別を選べない

というテンプレート的な情報に偏っていました。そして私は

  • トイレはそんなに苦にならない
  • 女子の制服もさほどイヤでない(イヤだったときもある・男子の制服を着たかったときもある)
  • 私服でも女性らしい服装をしたいときもあった
  • 書類の性別欄は、我慢しながら肉体の性(女性)を選べた

という状態だったので、「性同一性障害ではないのかもしれない」と思っていました。

ですが性的な空想をすると自分の身体イメージは必ず男性ですし、自分の体を男性にしたい(性転換したい)とも熱望していました。

変身願望や現実逃避なのかもしれないと思っていた

その頃流行ったマンガで「らんま1/2」(高橋留美子・小学館)というものがありました。主人公の早乙女乱馬という男性は、中国の呪いの泉で溺れ、「水をかぶると女性になってしまい、お湯をかぶると男性に戻る」という体質になりました。そんな彼の性自認は男性で、体が女性になってしまうことが屈辱で、「水をかぶっても女にならない体」になるために奮闘するコメディです。

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このマンガの世界では、望めば「完全な性転換」ができるのです。それが羨ましくてたまらず、「私も男溺泉(男性の体になってしまう呪いの泉)で溺れたい」と子ども心に思っていました。

ですがテンプレート的な性同一性障害情報の影響もあり、「なんとか女性として生活できているのだから、自分が性転換したいのは変身願望なのかもしれない」と感じていました。

発達障害もあり、現実の人間関係に馴染めなかったので、現実逃避として性転換を望んでいるのかなと思っていたのです。

それでも自分が無意識にイメージするのは男性の体で、それに対し現実は女性の体なので、違和感はあり続け、お医者さんに相談したいとも思っていました。

実際に医師に相談するまでの道のり

性別の違和感エピソードはその後もいくつもあるのですが、実際に病院で相談できたのは35歳になってからでした。

というのも、22歳で自殺未遂をして精神科にかかり始めて「統合失調症」と言われ始め、その頃に当時の精神科主治医やカウンセラーに相談しても「性別の違和感は統合失調症の症状かもしれないから、まずは治ってから」と言われたのです。

統合失調症として治療して良くならず、転院して診断名が一旦保留になった末、アスペルガー症候群と判明し、二次障害でうつ病・不安障害と診断がついてから、「もう統合失調症じゃないから」と相談しようとしたら「うつ病の症状かもしれないから」と治るまで保留となりました。

数年後、現在の精神科主治医が診断書に「うつ病」と書かなくなってから、性同一性障害について改めて相談しようとして、「専門知識が無いので」と断られました。ほかに相談できる先も地元には見つかりませんでした。

札幌医科大学のジェンダー外来を受診したくて申し込んでも、抽選だったので、2回申し込んで2回落ちました。(3回申し込んだ気がしますが、記録が残っているのは2回です)

しばらく諦めていましたが、やはり諦めきれずに診断を受けたいと思い始めたのが去年。そして札幌医科大学のジェンダー外来の新患受付に申し込んで、また抽選に落ちて計3回(4回?)。

どうしても諦めきれず、相談だけでもできる病院に行きたいと思って札幌のメンタルクリニックを受診し始めたのが去年(2019年)の秋です。

医師に相談してみて「男と名乗る許可がほしかった」と気づく

病院に相談に行ってみて、様々な自分の気持ちに気づきました。その中のひとつは、

白崎
白崎

誰かに「あなたは男と名乗っていい」と言ってほしかったんだ……。

というもの。

「あなたは性同一性障害です」と誰かにはっきり言ってほしかった。

「私の体の性別が、心の性別と食い違っている」と、他の人に認めてほしかった。

そういう思いにようやく気づけました。

私は自分の性自認が男であることに自信が持てず、誰かにそれを保証してほしかったのです。肉体は女、着たい服も女、でも女扱いは苦痛だし男になりたい。それが変身願望でも現実逃避でもなく「心の性別が男だから」と誰かに認めてほしかった。

でも気づいたのです。

白崎
白崎

自分の心の性別は、自分で決めるしかない。

「自認」なのだから、自分で認めてあげなきゃ……と。

誰かに決められて性別を名乗るのではなく、自分が思う性別を名乗っていいのだと思うようになりました。

自分を男と認められた根拠

別の記事にも書きましたが、根拠は以下のような感じです。

  • 子どものころから性転換がしたかった
  • 周りの男子のように声変わりがしたかった
  • 胸が平らなほうが自分の体として正しいと感じる
  • 子宮切除の可能性が生まれたとき自然と嬉しかった(切除はしていません)
  • 性的な想像をすると自分の体は自然と男性
  • 風呂場で自分の裸体にありえないもの(乳房)がついていて醜い
  • 子どもがほしかったころ、自分が妊娠・出産するという発想がなかった
  • 男性への同性っぽい感覚、女性への異性っぽい感覚
  • 自分なりの「男性らしさ」観に沿いたいという感覚
  • 女らしいと言われる苦痛、男と扱われる喜び

こういった子どものころから現在まで続いている気持ちから、「自分を男と認めていいんだ」と思えるようになって、自分らしい人生に一歩近づくことができました。

まとめ

私は専門医との相談を経て「自分の心の性別は自分にしかわからない、だから自分が決めるしかない」と思うようになりました。

その結論が私の場合は「自分は男」でしたが、「自分はXジェンダー」が結論でもいいのだろうと思いますし、結論が出なくてもそれはそれで良いのだと思います。

そして性自認と社会的な性別が一致する必要もないのだと思います。私は性自認は男性ですし、友人知人には男性と扱ってほしいですが、見知らぬ人にも男性として扱われたいかどうかはよくわかりません。

いろんな性のありかたがあっていいんだと思います。「みんな違って、みんないい」ですね。

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書いた人:
白崎矢宵(やよい)

発達障害、特に自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)と診断されています。性別不合(トランスジェンダー・FtM)でもあります。道具やサービスを使って自分の生活を改善しながら、気になった情報を雑多に発信しています。著書「アスペルガーだからこそ私は私」発売中です。

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